ドイツでの賃貸において、最も大きなリスクの一つは「貸主や管理会社」です。残念ながら、すべての貸主が誠実であるとも業務遂行能力があるとも限りません。特に法人貸主の場合は、キャパシティー不足の問題が往々にして生じます。
当社では、過去のトラブル事例から、仲介を避けている貸主や管理会社の「ブラックリスト」のような基準を設けています。もちろん、万が一トラブルが起きた際は、お客様の利益を守るため徹底して法的に闘いますが、最初からリスクを回避するに越したことはないからです。
ここでは、契約前に見抜くべき「避けるべき貸主」のサインと、実際に起こり得るトラブル事例を詳しく解説します。
1. 物件管理が杜撰(ずさん)なケース
建物全体の管理状態は、その後の生活の質に直結します。これは個人オーナーだけでなく、管理会社の質にも左右されます。
- 起こり得るトラブル: エレベーターが故障しても数週間放置される、共有部の破損がいつまでも修理されないなど、不便な生活を強いられます。
- 見抜くサイン: 内見の際、専有部だけでなく中庭やゴミ捨て場をチェックしてください。整理整頓が行き届いていない、ゴミが溢れている、掲示板が古い情報ばかりといった物件は、管理体制に問題がある可能性が高いです。
2. 「家賃の競り上げ」を要求してくるケース
「他にも申し込みが多いから、家賃を上乗せしてくれたら審査であなたを優先する」といった持ちかけは非常に危険です。
- 起こり得るトラブル: 本来、家賃は周辺相場(Mietspiegel)との整合性を考慮して設定されるべきものです。その場の交渉で法外に家賃を上げようとする貸主は、法律を軽視しているか、日本人を侮っている証拠です。
- 予見されるリスク: このような貸主は、退去時にも不当な補修費用を請求してくるなど、金銭トラブルに発展する確率が極めて高いと言えます。
3. 契約内容に無関心、または訂正に応じないケース
契約書の不備を指摘しても「直すつもりはない」「読みたくない」といった態度をとる貸主には注意が必要です。
- 起こり得るトラブル(キッチンの例): 例えば「キッチンは無償利用だが賃貸物ではない」という条項がある場合、通常は修理負担を明確にするため訂正を申し入れるべきです。しかし、契約にルーズな貸主は「細かいことはいいじゃないか」と流そうとします。
- その後の代償: 実際にオーブンや食洗機が故障すると、貸主は豹変します。契約書を盾に、高額な修理費用をすべて借り手側の負担として押し付けてくるのです。
4. 入居時は適当、退去時は厳格な「後出し」タイプ
内見時や引き渡し時の確認を疎かにし、退去時に牙を剥くタイプです。
- 起こり得るトラブル: 入居時に清掃が行き届いておらず、プロトコール(入居時記録)も用意しないような貸主に限って、退去時には「清掃が不十分だ」「壁を塗り直せ」と、借り手の費用で物件をリフォームしようと画策してきます。
- 自衛のポイント: 引き渡し時にプロトコールを作ろうとしない貸主、あるいは現状の不備を認めようとしない貸主との契約は、極めてハイリスクです。
おわりに
一般の方が内見や数回のメールのやり取りだけで「貸主の人間性」を見抜くのは非常に困難です。しかし、住宅難で借り手は「選んでいただく立場」であるとは言え、安易に借りられる物件に飛びつくことなく、慎重に将来のリスクを予見しながら物件を選びたいものです。
当社では、避けるべき貸主・管理会社の「ブラックリスト」のような基準を設けていますほか、これまでの膨大な取引経験から、お客様に申し込みの取り止めをご提案することもあります。もちろん、ご入居後にトラブルが起きてしまったときには、法律と慣習に基づいて闘いますが、未然に防げるに越したことはないからです。おかしいと思われる予兆には常に注意しております。