ドイツの花粉症 – 知識と対策

スギ花粉がないドイツ

春先になると、目のかゆみや鼻水、くしゃみといったアレルギー症状に悩まされる方が多いことでしょう。いわゆる 「花粉症」 ですが、日本に限った話ではありません。ドイツを含め、欧州にはスギやヒノキがない一方、イネ科植物(Gräser)やシラカバ(Birke)が多く分布し、花粉症の大きな原因として知られています。ドイツ語で花粉症は 「Heuschnupfen」 や 「Pollenallergie」 と言いますが、ドイツ国内だけでも、成人における花粉症の有病率は約15%に上ります。これは他のアレルギー性疾患と比較すると多い傾向にあります(2016年 Allergo Journal International 掲載のロベルト・コッホ研究所による調査レポートより)。

花粉症の時季【ヘーゼルは2~3月】

日本人であれば、花粉症の季節といえば春のイメージが強いですが、ドイツでは年間を通して、様々な草木の花粉が飛散しています。まだ降雪が見られる1月から3月には、ヘーゼルナッツで有名なヘーゼル(Hasel)の花粉が2月中旬から3月にかけて猛威を振るいます。4月から5月はシラカバの花粉がピークを迎え、5月から8月まではイネ科植物の花粉が飛散します。さらに秋には、10月頃までブタクサ(Ambrosia)やヨモギ(Beifuß)の花粉が飛び交うので、ドイツでも花粉症を抱える人が少なくありません。渡独したことで日本のスギ花粉から解放されても、ドイツでの滞在期間が長ければ長いほど、これらの花粉に触れる機会が増えます。また、生活地域やその年の飛散量も、ドイツでの花粉症発症の要因ともなります。

ドイツの花粉症【主な症状】

ドイツでの花粉症の症状は、日本のものと大きく変わることはありません。

主に以下の症状が表れます。

  • くしゃみ(Niesen)
  • 鼻水(Laufende Nase / Fließschnupfen)
  • 鼻づまり(Verstopfte Nase / Nasenverstopfung)
  • 目のかゆみ(Juckende Augen)
  • 目の充血(Rote Augen)

鼻や目に表れる症状の他にも、倦怠感や睡眠障害などの不調も伴うことがあります。

ドイツの花粉症対策 ① ハーブティー

花粉症対策として内服薬を利用する方が多いと思いますが、薬の多くは、アレルギー症状を抑えてくれる一方、眠気や口の渇きなどの副作用が表れることがあります。そのような時は、ハーブティーを代用してみてはいかがでしょうか。実際にドイツでは、自然療法の取り組みが進んでおり、病院でもお茶を飲むことを勧められます。スーパーや薬局では、様々な種類のハーブティーを取り揃えていて、その中でも Bad Heilbrunner(バードハイルブルンナー)は半世紀以上もの歴史がある薬用ハーブティーブランドとして有名です。症状に合わせたハーブティーを選ぶことができ、花粉症を含めたアレルギー性疾患には、免疫機能を高めてくれるものがおすすめです。1箱にティーバッグ8個入りで約1.50€で販売されています。さらにドイツでは、ネトル(Nettle)エルダーフラワー(Elder Flower)のハーブティーも効果的と言われています。ネトルは、昔から植物療法に欠かせないハーブとして有名で、老廃物の排泄を促し血液を浄化する作用があり、これが花粉症の予防に繋がっていきます(日本メディカルハーブ協会 – メディカルハーブ事典より)。そして、エルダーフラワーは有効成分としてビタミンPが含まれ、毛細血管を強くしアレルギー反応を抑える役割を果たします。欧米では 「インフルエンザの特効薬」 とも呼ばれているそうです(日本メディカルハーブ協会 – メディカルハーブ事典より)。

ヨーロッパでは、春先(1月頃)から、ハーブティーを飲む習慣をつけ、アレルギー性疾患の予防を図る「春季療法」 という健康法があるので、ぜひ取り組まれてはいかがでしょうか。

ドイツの花粉症対策 ② ホメオパシー

ドイツ発祥のホメオパシーという自然療法もあります。ドイツ語で 「Homöopathie」 と言いますが、ドイツ人医師 Christian Samuel Hahnemann によって体系化された代替医療です。ドイツでは家庭医全体の75%がホメオパシー薬を処方していると言います(日本メディカルホメオパシー学会 – ホメオパシーとは より)。 これは、ある特定の症状を引き起こすものが、その症状を緩和することもできるという考えを前提に、人間の本来持つ自己治癒力を助け、回復に導くことを目的としています。ホメオパシー薬は、症状の原因となる物質をごく少量、なおかつその濃度を薄めて製造されています。薬局で手軽に購入することができるので、興味のある方は探してみると良いかもしれません。

ドイツの花粉症対策 ③ 免疫療法

ホメオパシー薬やハーブティーよりも、具体的な治療に取り組みたい方は、アレルゲン免疫療法というものがあります。ドイツ語で 「Hyposensibilisierung」 と言い、アレルギーの原因(抗原)であるアレルゲンを体内に投与することで、徐々に身体を慣らしていく治療法で、花粉症を含むアレルギー性疾患に対して行われています。花粉症の場合、少しずつ花粉を身体に投与し、花粉に対する過敏反応を和らげていくという意味で、日本では 「減感作療法」 とも呼ばれます。ドイツですでに花粉症を発症し、日常生活に支障が出る方は、病院に問い合わせてみても良いかもしれません。

ドイツの花粉状況を知るには

外出の際、花粉の飛散量を事前に知ることも重要でしょう。ドイツ公的保険のTK(Techniker Krankenkasse)は、花粉症の人に向けた専用アプリ TK-AllergyApp 「Husteblume」 を提供しており、位置情報を登録しておけば、住んでいる地域の約8種類の花粉の飛散量を知ることができます。また、ドイツでは毎年 花粉カレンダー 「Pollenflugkalendar」 というものもあり、15種類以上もの花粉のピークシーズンを一目で確認することができます。さらに、ドイツ気象局(Deutscher Wetterdienst)の 「Pollenflug-Gefahrenindex(花粉危険指数)」 を見ると、地域別に特定の花粉について、その日の飛散量を確認することもできます。日頃の外出時やドイツ国内の旅行の際に活用してみてはいかがでしょうか。

日々の花粉症対策で、ドイツの春も存分に楽しみたいですね。

関連リンク

2016年Allergo Journal International掲載のロベルト・コッホ研究所の調査レポート

Bad Heilbrunner(バードハイルブルンナー)– 花粉症対策としてのハーブティー

日本メディカルハーブ協会 – メディカルハーブ事典 – Nettle(ネトル)

日本メディカルハーブ協会 – メディカルハーブ事典 – Elder Flower(エルダーフラワー)

日本メディカルホメオパシー学会 – ホメオパシーとは

ドイツ公的保険TK – 日頃の花粉症対策について

TKの花粉飛散量がわかるアプリ TK-AllergyApp, Husteblume

Allergiecheck – Pollenflugkalendar 2023(花粉カレンダー2023年版)

Deutscher Wetterdienst(ドイツ気象庁)– Pollenflug-Gefahrenindex(花粉危険指数)